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ホームカミングデー,特に物理学教室F研の見学

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一応顔出すかと行ってみたら面白かった。東進ハイスクールの志田晶先生の講演を聞きにいった。先輩だったとは知らなかったよ。数学出身者あるあるは身につまされる話であった。適当に回っていると知り合いの職員が微妙な表情で迎えてくれるのがなんとも微妙。 さて,このあたりは前置き。

物理学科の研究室紹介を眺めていたところ霧箱が目についた。そこがF研の展示だった。学生が説明しようとしたところで霧箱ですねーとかいうことを言いだすところで妙な人だったな。霧箱の中で時々霧の筋が走るのが面白くて眺めていた。そのあとポスター展示の説明を聞いていると面白い話だった。OPERA実験というのがあってこれはタウニュートリノの振動を検出する実験だがそれを原子核乾板でやっているという。原子核乾板というのは大体写真のフィルムのようなものでその中を素粒子が通りぬけるとその部分が感光して軌跡として残る。その軌跡の顕微鏡で分析して何の素粒子反応がおこったのか調べるというものである。そのための検出装置がフィルムと鉛で積層したもので構成されている。一つの塊がブリックと呼ばれていて,大きさは片手で持てる大きさだが,持ってみると,というか持たされたのだが,ずしりと重い。そのブリックが何千何万個(適当)と並べてあって1000トンを越える重量になっているという。で肝心のタウニュートリノの振動の検出は3例あるという。反応パターンもいろいろあって最低でも6回は検出したいので頑張っているという。

そんなあたりでその展示を離れ他の研究室の発表も眺め,学内を他にも回ってから研究室見学もできるということを教えてもらっていたので研究室に押し掛けて先程説明してくれた女性の研究員を掴まえて話を聞く。これが聞けば聞くほど面白い話だった。原子核乾板という話はどこか遅れたような印象を持っていたがそんな考えを引っくり返すような研究をしていた。

OPERA実験で今使っている原子核乾板は一枚が葉書ぐらいの大きさのフィルムになっているのだがそれを人手で(何十・何百枚?)顕微鏡で読んでいたのでは話にならないので自動読取装置で分析しているという。それも研究室で自主開発をして,なんと部品から手作りのところもあると。顕微鏡と画像を解析するコンピュータとの組み合わせになっていて,フィルムをセットするだけでフィルムをスキャンして疑わしいイベントを自動的に検出してコンピュータに保存してくれるという。最初のころはフィルムのスキャンも1平方cm/時ぐらいだったのがだんだんと改良されて100平方cm/時ぐらいになって,今はその100倍高速な装置の開発を行なっているという。それだけ高速になるとフィルムの交換の頻度が上がって人手でやるのも大変なので自動フィルム送り装置も開発しているという。

他の研究も説明してもらったのだが,気球で原子核乾板を上げて調べるという。そのままだと検出した時間が不明になるのでわかるようにする工夫とか実験装置の向きを検出するためにスタートラッカーを積んでいるとか。ミューオトモグラフィーの話とかもあった。これはスキャンしたい構造物,古墳だとか火山の回りに原子核乾板を並べる。するとそのあたりを飛び回っている宇宙線が物体の内部を通ってそれを原子核乾板で検出する。そこから内部の状態を推測するというものであるという。古墳の研究をしたいからやっている人がいるんだと。またダークマターの検出もできるということで挑戦しているとか,軌跡のパターン,これが点線になっているだけだったりするのだが,から何の粒子が動いたがわかるとか,写真の感光剤も自分たちで開発しているという。この感光剤も一種類あればいいという話ではなくて実験の目的からいろいろな特性を持ったものの開発が必要だという。 部屋には実験で使ったフィルムが段ボールに詰め込まれた棚がずらりと並んでいてなかな整理が大変そうだった。またフィルムは環境に敏感だという理由で部屋は加湿器が(手作りっぽいのだが)入れられて空調で室温も一定に保っているという。

実際に自動読取装置が動いているところも見せてもらった。直径20cmぐらいの金属の筒が顕微鏡になっていて,その下にステージがあってそこにフィルムをセットする。自動的にステージが動いてフィルムの各所を顕微鏡で読み取る。顕微鏡のデータはPCに送りこまれてリアルタイムで解析が行われる。このスキャン結果も画像データでそのまま保存していてはデータが膨大になるのでリアルタイムで画像を解析して軌跡のデータのみを保存するようにしているとのこと。またステージをずらすと装置に振動が起こるのですばやく静止させるための工夫も説明してもらった。カウンターウェイトを取り付けてという,言われてみればああそうだねという話なんだが,面白い発想で作っているなあと思った。開発段階なのでまだ目標の100倍までは行かないということだったが実際にスキャンしているところを見せてもらう。まず手動で動かしてもらった。操作にゲーム機のコントローラーを使うというのがらしいというか。実際にフィルムの軌跡,何かが通りぬけた痕跡を見せてもらう。またステージを固定したときに焦点をずらすことでフィルムに斜めに入っている軌跡を確認できる。

次に本格的なスキャンのデモを見せてもらったが,PCに画面が出ているのだが,一つの視野が映ると奥行方向に一瞬で焦点をずらしてフィルムの各層の状態を調べて,ステージをずらしてまたスキャンするということを繰り返していた。ステージの移動は一度に数ミリぐらい動いているようだった。でこれがどれぐらい早いのかよくわからないけどすごい装置だった。データの保存用にタワーPCがずらずら並んでいるのは自作らしくて作った人の名前が貼ってあるという。

素粒子実験というとLHCやKEKのような粒子加速器で検出装置が何千億でという話ばかりだと思っていたが違う世界もあることを発見した。昔は原子核乾板でやっていたが人手の作業に耐えられず電気的に検出する方向にみんな行ってしまったという話だったが,フィルムを自動解析することで新しい世界を拓きつつあるということなのだろう。

最後に研究室公開のイベントとはいえ1時間以上付き合って説明をしてくれたF研の研究員・院生の皆様,ありがとうございました。自分がもうちょっとわかりやすい説明で伝えられるといいんだけどな。写真がないのも悪いんです。